ロッキード・マーチン(LMT)株価急落 - 2025年第2四半期決算分析
ロッキード・マーチンが2025年第2四半期決算発表後、株価が急落しました。
期待を下回る業績と否定的なガイダンス(見通し)の影響でした。第2四半期の売上高は181億6千万ドルで、市場予想の185億7千万ドルを下回りました。
純利益は前年同期比約80%急減し、'アーニングショック'レベルを記録しました。1株当たり純利益(EPS)も1.46ドルで、市場予想の6.54ドルを大きく下回りました。
21年連続増配を続けてきたロッキード・マーチンは、配当投資家からも多くの愛を受けている銘柄ですので、今回の決算発表を詳しく分析してみます。
1. 2Q25決算概要:売上高は維持、収益性は大きな打撃
"売上高は同じなのに、なぜ営業利益はこんなに減ったの?"
売上高は予想を下回りましたが、昨年比で似たような水準でした。問題は営業利益で、戦闘機などが含まれる航空部門で大きな営業損失がありました。
一部のレガシープログラム(legacy program)で18億ドルに達する大規模損失が発生し、このうち9億5千万ドルが機密航空プログラムで発生しました。
これにより2025年年間営業利益目標を18%下方修正し、投資家の懸念を増幅させました。
主要財務指標まとめ
項目 | 2Q25 | 2Q24 | 変化 |
---|---|---|---|
売上高 | 182億ドル | 181億ドル | 0% |
営業利益 | 7億ドル | 21億ドル | -65% |
営業利益率 | 4.1% | 11.9% | -7.8%ポイント |
純利益 | 3億ドル | 16億ドル | -79% |
EPS | $1.46 | $6.85 | -79% |
フリーキャッシュフロー | -1.5億ドル | 15億ドル | 赤字転落 |
重要な点は売上高が前年同期とほぼ同じだということです。これはロッキード・マーチンの基本事業は依然として堅調であることを示しています。
問題は大規模プログラム損失計上が収益性を大きく損なったという点です。
2. 営業利益急落の主犯:3つのプログラム損失計上分析
"機密プログラムって、いったい何を作っているの?"
ロッキード・マーチンの最大の損失要因である'機密プログラム'は、文字通り国家機密です。会社も具体的に何を作っているのか公開できません。ただし、私たちが分かることは、最先端軍事技術を開発する中で予想よりもはるかに困難な技術的難関にぶつかったということです。
このようなことは実際、防衛産業界では珍しくありません。世界にない武器を作る仕事ですから。問題は政府と事前に決めた価格で契約を結んだのに、実際にはそれよりもはるかに多くの費用がかかるという点です。**"これを作るのに100億ドルかかると思ったけど、200億ドルかかってしまった"**という状況なのです。
機密プログラム(Classified Program)とは?
米国防衛産業企業が政府と締結する契約のうち国家機密に該当するプロジェクトを指します。通常、以下のような特徴があります:
- 極秘軍事技術:次世代戦闘機、ステルス技術、極超音速兵器など
- 公開制限:プロジェクト名、技術詳細、顧客企業などほとんど非公開
- 固定価格契約:開発リスクを企業が負担する構造
- 技術的挑戦:既存にない技術開発で予測困難なコスト発生
ロッキード・マーチンの場合、F-22、F-35開発当時にも類似の技術的難関とコスト超過を経験しています。
プログラム別損失規模と原因
プログラム | 損失規模 | 事業部 | 主要原因 |
---|---|---|---|
機密プログラム | 9.5億ドル | 航空宇宙 | 設計・統合・テスト問題深刻化 |
CMHP | 5.7億ドル | RMS | カナダ海上ヘリ契約再構築 |
TUHP | 0.95億ドル | RMS | トルコヘリプログラム範囲調整 |
合計 | 16.15億ドル | - | - |
今回の損失計上が特別な理由
1. 機密プログラム(9.5億ドル損失計上)
- 設計、統合、テストで技術的難易度が当初予想を大きく超過
- スケジュール遅延とコスト増加で将来予想損失を現在時点で計上
- 政府契約特性上追加コスト回収が制限的
2. 国際ヘリプログラム(6.65億ドル損失計上)
- カナダ、トルコとの契約条件再交渉過程で損失確定
- インフレと為替変動影響も反映
核心:これらの損失は既存契約の再評価結果であり、会社の新規受注能力や核心力量には直接的な打撃がないという点です。
3. 事業部門別業績分析:明暗がはっきりした事業部
"F-35はよく売れているのに、なぜ航空宇宙事業部は赤字なの?"
まず航空事業部でF-35戦闘機の売上自体は大きな問題がないようです。ただし、現在政府と進行しているプロジェクトでの損失、インドなどでの納入で浮上した技術的問題などが足を引っ張っていると見られます。
ミサイル&火器統制事業部は今四半期の救世主です。ウクライナ戦争、中東紛争によりHIMARS、JASSMのような精密ミサイル注文が爆増したからです。
**"戦争は恐ろしいが、防衛産業企業には好況"**という言葉が実感される部分です。
航空宇宙(Aeronautics):F-35は成長するが機密プログラムが足かせ
指標 | 2Q25 | 2Q24 | 変化 |
---|---|---|---|
売上高 | 74億ドル | 73億ドル | +2% |
営業損失 | -1億ドル | 8億ドル | -113% |
営業利益率 | -1.3% | 10.3% | - |
F-35プログラムは依然として堅調:生産量増加で売上が増えましたが、機密プログラム損失計上が全体業績を圧倒しました。
F-35プログラムの継続的な懸念事項
F-35はロッキード・マーチンの孝行息子事業ですが、依然としていくつかの問題を抱えています:
- Block 4アップグレード遅延:ソフトウェア開発問題でスケジュール遅延
- 生産目標達成プレッシャー:年間目標物量達成に対する不確実性
- 整備費用問題:運営費用が当初予想より高く策定
- 国際パートナー変動:一部国家の注文変更または遅延可能性
しかし、グローバル標準戦闘機としての地位と継続的な新規注文で長期的成長動力は依然として残っています。
ミサイル&火器統制(MFC):唯一の成長動力
指標 | 2Q25 | 2Q24 | 変化 |
---|---|---|---|
売上高 | 34億ドル | 31億ドル | +11% |
営業利益 | 5億ドル | 5億ドル | +6% |
営業利益率 | 14.0% | 14.5% | - |
地政学的緊張の受益:JASSM、LRASM、HIMAにRSなど戦術ミサイル需要急増が成長を牽引しました。
回転翼&任務システム(RMS):ヘリプログラム損失で営業損失
指標 | 2Q25 | 2Q24 | 変化 |
---|---|---|---|
売上高 | 40億ドル | 45億ドル | -12% |
営業損失 | -2億ドル | 5億ドル | -135% |
営業利益率 | -4.3% | 10.9% | - |
宇宙(Space):安定的な成長持続
指標 | 2Q25 | 2Q24 | 変化 |
---|---|---|---|
売上高 | 33億ドル | 32億ドル | +4% |
営業利益 | 4億ドル | 3億ドル | +5% |
営業利益率 | 10.9% | 10.8% | - |
GPS III、NGIなど宇宙防衛事業が着実な成長を見せています。
4. キャッシュフローと配当持続可能性分析
"利益も大きく減ったのに、配当金は大丈夫?"
配当投資家なら最も気になる部分でしょう。ロッキード・マーチン株主が最も心配しているのは**"ひょっとして配当金を削るのでは?"**でしょう。
結論から言うと**"配当金は安全です"。会計上の利益は減りましたが、実際の現金創出能力は依然として堅調だからです。ロッキード・マーチンが21年間配当金を着実に上げてきたのは、まさにこのようなキャッシュフローの安定性**のためです。
考えてみてください。米国政府がF-35代金を払わないわけがないでしょう?契約金は続々と入ってくるのに、一過性損失のために配当金をカットするのは経営陣としても**"鶏を殺して卵を取る"**愚かな行為です。
キャッシュフロー悪化の原因
2Q25フリーキャッシュフローが-1.5億ドルで赤字転落した主要原因:
- 運転資本増加:F-35関連売掛金と契約資産増加
- 在庫資産増加:シコルスキーヘリ在庫蓄積
- 契約負債減少:宇宙防衛プログラム請求サイクル影響
しかし上半期累計では依然として8億ドルフリーキャッシュフロー黒字を記録しました。
配当安全性チェック
配当支給現況:
- 2Q25配当金支給:8億ドル
- 年間配当金規模:約32億ドル(1株当たり$13.20)
- 現在配当利回り:約2.8%
配当持続根拠:
- 上半期営業キャッシュフロー16億ドル:配当金を十分にカバー
- 21年連続増配:強力な配当政策意志
- 防衛産業企業特性:長期政府契約でキャッシュフロー予測可能
5. 2025年ガイダンス下方修正の意味
"ガイダンスを下げたということは...今後も良くないという意味?"
ロッキード・マーチンが今年の予想業績を大幅に下げたことを見て**"今後も継続的に困難になる"**と会社が予想していることですが、詳しく見てみましょう。
まず売上見通しはそのまま維持しました。つまり、**"お金が入ってくることは変わらない"**という意味です。
問題になったプログラムの損失をこの四半期に一括整理したので、下半期からは基底効果で業績上昇傾向が明確になる可能性が高いです。
主要指標調整内容
項目 | 既存ガイダンス | 修正ガイダンス | 変化 |
---|---|---|---|
売上高 | 737-748億ドル | 737-748億ドル | 維持 |
セグメント営業利益 | 81-82億ドル | 66-67億ドル | -18% |
EPS | $27.00-27.30 | $21.70-22.00 | -19% |
フリーキャッシュフロー | 66-68億ドル | 66-68億ドル | 維持 |
注目すべき点:
- 売上とキャッシュフローガイダンスは維持:基本事業は堅調
- 収益性指標のみ下方:プログラム損失計上の一過性影響
- 下半期回復見通し:第2四半期損失処理後の正常化期待
6. 長期投資観点:防衛産業界の構造的成長動力
正直に言って、今の地球村はこれまでのどの時よりも危険です。ウクライナ戦争は3年目に続いており、中国と米国の葛藤は深刻化しており、中東ではいつまた別の紛争が起こるか分からない状況です。
このような現実が防衛産業企業には長期的成長動力になります。各国政府が**"私たちも防御力を高めなければならない"と国防費を増やしているからです。特にロッキード・マーチンはF-35というグローバル標準戦闘機**を持っているので、このような需要増加の最大受益者になるしかありません。
また、トランプ政府の'ゴールデンドームプロジェクト'が具体化される場合、ロッキード・マーチンが受益株として浮上する可能性があります。
詳細は下記の記事で説明しました。
**"不幸な現実だが、投資家には機会"**という冷静な計算が可能な分野です。
結論:一過性業績不振、配当投資家には魅力的な進入ポイント
配当投資家なら今がロッキード・マーチンに関心を持つタイミングです。
今回の業績不振は**"予想できなかった技術的難関"と"国際契約の複雑性"が重なって生じた一過性イベントです。会社の核心競争力であるF-35、ミサイル、宇宙技術は依然として世界最高水準であり、何よりも全世界的に防衛需要は継続的に増えるしかない状況**です。
21年連続増配企業で、安定的なキャッシュフロー、そして現在の一時的株価下落を総合すると、長期配当投資家には**"困難な時に良い株式を安く買う機会"**になることができます。
もちろん短期的には変動性もあり、イーロン・マスクの言葉のように現代戦が規模の大きな戦闘機よりはドローンのような小規模技術に代替される可能性があるというリスクがあることを考慮して慎重に投資していただきたいと思います!
投資判断に役立ちましたか? ロッキード・マーチン以外にも気になる配当株がございましたら、いつでも分析いたします!